料理人 野﨑洋光

Vol.7どんな料理にも合う万能味噌。
東日本の米味噌と
西日本の麦味噌。

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味噌の種類は大きく分けて4つ
東日本の米味噌、西日本の麦味噌、
中京地区の豆味噌、関西の白味噌

50年間和食料理人として、さまざまな味噌に出会い、その特徴を見極めてどのように使うかを研究し続けてきた野﨑さん。今回は、家庭料理でも参考になる、味噌の種類による使い分けを教えていただきます。

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味噌の材料は大豆、塩、糀の3つ。米糀を使うと米味噌に、豆糀なら豆味噌に、麦糀なら麦味噌になり、材料によって大きく3つに分けられることは前回うかがいました。さらに、米味噌は地域によって使われる糀の量に差があり、それによって味噌の味わいもかなり違ってくるので、米味噌は大きく2つに分けて考えると使いやすいと野﨑さんはおっしゃいます。

「東日本では、大豆10に対して米糀6~10くらいの割合で作られた辛口の味噌が行き渡り、関西では、大豆10に対して米糀20ほどの割合の白味噌がよく使われています。そして、僕は、東日本でよく使われる辛口の米味噌と、西日本でよく使われる麦味噌はどんな料理にも使いやすい万能味噌だと考えています。一方、中京地区でよく使われる豆味噌、関西でよく使われる白味噌は、料理人が店で好んで使う味噌。その味の特徴を生かして料理に使うのがよいと思っています」

そこで、今回はどんな料理にも合う東日本の米味噌、西日本の麦味噌について、次回に中京地区の豆味噌、関西の白味噌について教えていただくことにしました。

食べなれた米味噌の思い出と
麦味噌を初めて食べたときの記憶

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「僕は福島で生まれて育ちましたが、我が家の味噌といえば、信州味噌のような辛口の米味噌でした。色は仙台味噌や越後味噌くらいの少し濃いめの色だったと思います。僕が子どもの頃は、どの家も自分の家で味噌を作っていましたね。我が家にも味噌蔵があり、樽に仕込んで二年目になるとおいしくなるので、その頃から料理に使い始めていたと記憶しています」

子どもの頃はどの家も味噌を作っていたことから、各家に味噌の香りが漂い、その香りが家々の匂いを作っていたと語る野﨑さん。そして、どの家の子どもも、自分の家の味噌が一番おいしいと思っていたそう。

「子どもの頃は、朝食に味噌汁とは別に、味噌料理をよく食べていました。味噌とえごまをまぜた『えごま味噌』や、味噌とねぎをまぜた『ねぎ味噌』を作って、朝畑で採った野菜をゆでて、それにかけていました。しいたけと味噌をいためた『しいたけ味噌』をごはんにのせたりもしていましたね。あの味は、あのときの家の味噌でないと作れないから、僕には同じ味は作れないんですよ」

と、ちょっと残念そうに、でも懐かしそうに野﨑さんは語ります。そして、子どもの頃から食べなれた味だからこそ、信州味噌のような辛口の米味噌が今でも好きな味とのこと。

一方、麦味噌については大人になるまで食べたことがなかったそう。

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「麦味噌を初めて食べたのは、22歳か23歳の頃。鹿児島県の徳之島に旅行に行ったときだったと思います。旅館の朝食に豚汁がでたんです。麦味噌は甘いと聞いていたけど、食べてみたら思っていたより塩けもあるなと。米味噌よりも穏やかな味で、自分としては少し物足りないと思いつつ、こってりとした豚肉に麦味噌はとてもバランスがいいと感じました」

それでは、辛口の米味噌と麦味噌は、お店ではどのように使われているのでしょうか。

「辛口の米味噌は普段使いに適している感じがしますし、麦味噌は繊維質があって灰色っぽいので、店の料理に使うのは少し難しいですが、新しい味を作るのにはよいですね。どちらも、どんな食材にも調和する味わいと香りなので、皆さんのご家庭での料理に使うのに、とても向いていると思いますよ」

万能味噌だからこそ
具材に変化をつけて楽しんでください

「米味噌は、基本的にどんな具材にも合う味噌ですから、例えば、味噌汁も豆腐、ねぎ、わかめがその家の定番だとしたら、香りを足すねぎの代わりに三つ葉や春菊を使って変化をつければ、新しい味を楽しめます。わかめの代わりにとろろこぶなんかを使えば強いうま味も加わり、食感も変わりますね。今回紹介している山家焼きではいわしを使いますが、あじ、さば、かつおなど青背の魚ならなんでもよく、香味野菜のセロリ、しょうがの代わりにピーマン、みょうが、細ねぎを使ってもいいです。自由に考えてもらいたいですね」

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学校の家庭科で教えられた料理から、発想を変えられない人が多いのでは、とかねてから感じている野﨑さんは、このようにも語ります。

「みんな料理をもっと自由に考えれば、新しい料理がもっとできるんじゃないかな。もっと簡単に、もっとシンプルに、好きな食材を使ってみればいいんですよ。万能な味噌の力を借りれば、どんなことをやっても間違いなくおいしく作れるんですから」

万能な味噌だからこそ、今までと違った食材も取り入れやすいというのが野﨑さんの持論です。さらに、毎日の食事作りがもっと楽になる秘訣を野﨑さんは教えてくれました。

「毎日の食事で、おかずを何品も作るのは大変ですよね。実は、ふだんの食事はごはんと味噌汁さえあればいい、と僕は思っています。汁ものを具だくさんにすれば、そんなに品数を多く作らなくてもいいんです。味噌汁はうま味もあってしっかりとした味だから、味噌汁をごはんで希釈しながら食べる。逆にいうと、ごはんを食べるために具だくさんの味噌汁を添えるとも考えられます。それができるのも、どんな具材とも調和のとれる万能な味噌があるからこそですね」

ところで、味噌を2~3種類組み合わせて使うと、それぞれのうま味の相乗効果でよりおいしくなると巷ではよく言われています。野﨑さん、そのあたりどうなんでしょうか。

「味噌汁では、味噌は1種類だけを使うほうが、具材のうま味を堪能できるし、味噌の香りをストレートに感じられると思います。だから、僕は味噌汁では味噌をまぜて使うことはしません。ただ味噌料理のときには調理法もさまざまなので、味噌をまぜて使うことはよくありますよ」

どんな味噌を組み合わせるとよりおいしくなるんでしょうか。

「特に決まりはないんです。自分が食べておいしいと思った味噌同士を組み合わせればいいと思います。しいていえば、味噌の色が違うものを合わせるといいかもしれないですね。色が違うということは、含まれる糀の量や熟成期間が違うはずなので、うま味も違っているはずだから」

合わせ味噌に興味がある方は、これをヒントに試してみてください。

次回は、豆味噌、関西の白味噌の特徴、使い方について教えていただきます。どうぞお楽しみに。

山家焼き

山家焼き

材料(2人分)

  • いわし

    2尾(正味150g)

  • 玉ねぎのみじん切り

    1/4個分

  • セロリのみじん切り

    30g

  • しょうがのみじん切り

    20g

  • 味噌(おすすめは「信州蔵みそ」)

    20g

  • こしょう

    適量

  • 青じそ、ミニトマト

    各適量

作り方

  1. いわしは包丁で細かくたたく。

  2. ボウルに1、玉ねぎ、セロリ、しょうが、味噌、こしょうを入れ、手でよくねりまぜる。4等分して丸くまとめ、少し平らにする。

  3. フライパンにクッキングシートを敷いて2を並べ、ふたをして中火にかける。半分ほど色が変わったら上下を返し、再びふたをして両面をしっかり焼く。器に盛り、青じそ、ミニトマトを添える。

「山家焼き」に
おすすめの蔵乃屋の味噌

信州蔵みそ

信州蔵みそ

「山家焼き」のおいしさの決め手は、ズバリ味噌です。さわやかな発酵香でクセのない、淡色系の信州蔵みそ。青背の魚にもよく合います。ぜひこの料理を作ってみてください。

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会津みそ起源の地にあるおいしい料理